カバラ教育研究所

全世界の政府は、世界経済成長率の低下と原油高などにより、有権者に公約を果たせなくなっています。実際に経済状況は去年と比べ変化しており、労働者世帯、起業家、会社・企業、地方政府などに対し、来るべき世代のための必要なインフラ整備や地球を救うといった公約など、全てを果たすのが難しくなっています。

アジアでのクレジット危機およびITバブルの崩壊以前までは、世界経済は急速な景気上昇をみせていました。その頃の私達は景気の後退はありえないと信じていました。米国の前連邦準備制度（FRB）理事会議長のアラン・グリーンスパンが守ってくれるから大丈夫と思っていました。そして未だに景気の低迷から抜け出すという声も多々耳にします。中国とインドにおける消費者保護運動の拡大が世界経済を引っ張っていくだろうと述べるように。これは私達が新しい“偶像崇拝”に移ったということです。

中国とインドの好景気が事実であれば心配はないのですが、歴史は違うことを示します。過去の100年間だけをとってみても、大恐慌の連鎖の鮮明な記憶が私達に警告をします。少しの例だけでも、1929年、1939年、1973年、1979年、1989年、1990年の日本、1998年、そして2000年とあります。経済のバブルは定期的に崩壊するものです。そして涙と一緒に幸せの日々は終わりを告げるのです。

私達の予想においてまだ計算していないことが狂う可能性もあります。例えば様々な災害に苦しむ中国がインフレを起こし、生産が低下する可能性。食料価格高騰が未発達の中国内陸部やそれ以外のアジアの地域で、巨大スケールの社会的動揺を引き起こす可能性。水不足が公共支出を増やし、飲み水の確保から生じる恐れのある国境争いなどの可能性。

全ての国家は自国の外側から物事を捉えないといけません。世界経済と世界金融システムの相互関連の度合い、海外市場と海外生産能力に対する信用、国際資本市場への依存、そしてそれらに中国が大きく加担していることなどは、私達が経済のバブル成長やその崩壊から保護されていると錯覚を起こさせます。ここで知っておかなくてはならないことは、どんなに緻密に計算された現実のモデルでさえ、関連する全要因を含むことは絶対にないということです。 ナシーム・ニコラス・タレブの『Black Swans（黒い白鳥）』と同じことです。その要因とは、非常に影響力があり、予想することが難しく、通常の予想の領域を超える、滅多に無いような想定外の出来事などです。

このようなことが起きた場合に、世界中の政府はどう対応すべきなのでしょうか？　政府にとって出来る事はあまりないといえます。その理由はそれが私達次第だからです。一般市民の一人一人が将来のビジョンをもってこれらの決断をしないといけないのです。あなたは小さくなる「パイ」の取り分のために戦争をしますか？　それともそれとは違う行動をとりますか？

困難な状況の時期において、すべてが悪いという訳ではありません。それは、個人が成長する時、不幸に立ち向かいながら協力する時、そして利他の為の自己制限の時なのです。家族や友達や隣人の取り分が少なくなることを知りながら、贅沢をしたり、不足している資源を無駄にすれば、 人は自然に恥を感じるものです。それは将来に対する信用が決め手になる時でもあるのです。

今や全世界の国々において、大きな変化が求められています。そして特に先進国から求められています。世界がどのように相互連結しているかが明白になるにつれ、私達は人類が色々な地域からなる１つの統合された国家であると気づく必要があります。それぞれの地域は独自の強さ、弱さ、要求、そして願望を持ち合わせているのです。しかし、全ては１つのものを構成する部分です。私達の社会連帯と自己制限を、異なる言葉をはなす人、異なる信念や信仰をもつ人、異なる肌の色の人、異なる風習を有する人、そして訪れたことのない場所で生活している人などを含む全人類の利益のために実施しなければいけません。

過去において、社会の利益が個人の利益よりも重要であるという原理のうえに樹立された国は、多く存在していました。しかし、このような国は必然的に崩壊してきました。その最も大きなケースが、私有財産の撤廃および制度化した社会連帯の押しつけに基づいたソビエト連邦の崩壊でした。カバラの英知は、なぜこのようなユートピア的国家が消える運命にあるのかを説明します。それらの国は利他的な行動を国民に課そうと試みました。しかし人間の先天的性質は利己心に基づいて行動することであるとカバラはとなえます。その結果からそのような国の市民は、自分の性質に反する行動を強いられ、ますます不満になったのです。そして必然的に一部の人間が、物質的な品物または権力であれ、他者よりも多く有するようになったのです。理想と現実の矛盾は結果的に国家体制を崩壊させるのです。

カバラによると、社会の中の全員が満足し安住する唯一の方法は、私達の性質そのものを変化させることです。カバラは私達全人類が１つの魂であることを知覚させる方法を提供します。人々がこの真実を理解した時、他者に気遣うことが実は自分自身に気遣うこととまったく同じであると確信するようになります。そして人々を強制的に他者に与えさせ分かち合わさせる必要がなくなります。それが人間の新しい先天的性質になり、社会は繁栄するようになります。今日直面している危機は全て消えてなくなり、過剰消費と搾取は過去のものになるでしょう。そして私達は世界の調和のなかで暮らすようになります。