金融危機の嵐がアメリカから全世界に広まって一年以上が過ぎました。最悪の事態はもう過ぎ去ったのでしょうか。それとも2008年12月6日にオバマ氏が警告したように最悪の事態はまだ来ていないのでしょうか。

 

憶測をしてもきりがありません。確かなことは戦後最悪と言われるようになった金融危機から一年半が過ぎたということです。そして実質的に有効な解決策もまだ見つかっていません。よって私達に必要なことは、違う視点から今の状況を再検討することかもしれません。

 

最初にすべきことは、今の世界情勢に至った原因を探ることです。大半の専門家はサブプライムローン問題を指摘し、それが金融危機のきっかけになったと主張します。しかしその サブプライムという言葉にだまされないでください。なぜならサブプライム市場が危機の原因ではないからです。危機はただサブプライム市場に表面化しただけであって、それは環境、人道、または核拡散などの危機に表面化してもおかしくはなかったと言えることなのです。

 

その危機を起こさせたものはどのような金融機関でもなく、むしろ金に対する強欲、野蛮な欲望、そして無責任な便宜主義なのです。簡単に言うと人間の自己中心的性質です。貨幣制度が最初に危機に見舞われた理由とは、単にその制度が人間の繋がりや関係における堕落した側面を具現するものだからです。

 

あいにくなことですが、その人間性はいくら納税者の資金を市場に投入したところで変わるものではありません。すでに合計で数兆ドルもの大金が米国、英国、フランス、そして諸外国で費やされましたが、いまだに融資も流動性も上昇の兆しを見せていません。そして資金援助は向こう見ずに行われたため、企業や銀行がどのような対象に資金を使ったのかが追求できないままでいます。コラムニストのナオミ・クレイン(Naomi Klein)がいうには、億万長者達が数億もの損失をだしたようにその数兆もの資金も無駄になったとのことです。

 

信頼の危機

お金は危機の原因ではありません。よって金で危機を脱することもありません。今日の財政問題や社会問題を解決するには、今までとは全く違う救済計画が必要とされます。それは私達を私達の自己中心的な行為から解放してくれるものでなければなりません。

 

「株価が暴落した」ということを最近よく耳にするようになりました。しかし私達はその意味を本当に理解しているのでしょうか。結局のところ株式市場というものは、評価と推測の寄せ集め以外のなにものでもありません。それは賭けと推測が指数やレートとして解釈される洗練された賭博場のようなものです。よって株式市場が崩壊したのではなく、人の信頼関係が実際には崩壊したといえます。クレジット会社は、銀行に頼れなくなった保険会社を信用しなくなりました。銀行は一般住民の暮らしの低下を保険会社のせいにする不動産代理業者に失望しました。そしていつものように最後は一般住民が責任をとるように強いられるのです。また、これに追い打ちをかけるようにマドフ氏(Madoff)による Ponzi Scheme(投資家に対するねずみ講的詐欺)は残った信頼をもすべて崩壊させました。

 

今やすべての人は財布のひもを締めて、昔の良かった時代のように床下にお金を貯めているのです。これが今までなくなるとは思ってもみなかった資本が消えたことの理由です。自称専門家はこの事を 流動性の危機 と呼びます。

 

しかしすべてが失われたわけではありません。実際の状況は良くなっています。その理由とは、壊れたようにみえた信頼はもともと存在していなかったからです。それはシャボン玉のような幻想であり、消えてなくなるのは当然だったのです。そもそも誰もが自己の利益のことしか考えていないような状況自体が、今のような危機を生じさせたのです。そしてもしも世界に本当の信頼が存在していないのなら、手遅れになる前に今それを見いだせばよいのです。

 

しかしそれはまだほんの一部です。危機が伝える本当の良い知らせとは、今や私達は世界の真の姿を知る準備ができたという事実です。それは世界が地球という“大きな船”であるということです。

 

新しい航海術

2人がボートに乗っているとします。そして一人がおもむろにドリルを手にし自分の所に穴を開け始めました。彼の連れが言いました「なぜそんなことしてるんだい。」彼は言いました「君には関係ないだろ。自分の所に開けているのだから。」連れは言いました「しかしそのままじゃ、船が浸水して2人とも沈んでしまうだろう!」

(偉大なカバリストShimon Bar Yochai、古代のカバラの書物『Midrash Rabba』からの引用、 Levitivus 4:6)

 

地球という船をみんなでシェアしているなかで、自分の席の下になら穴を開けれると思っている人は、深刻な過ちを犯しています。ギャンブルに失敗して自分の顧客だけが痛い目に合うと信じているブローカーや投資家は、今やすべての人を道連れにし深い海のなかに船を沈ましているのです。ベルリンにあるHypo Real Estate Bankから、ニューヨークのAIG、タイ北部にあるChai Ling Shiu and Sons靴店まで、すべての人を巻き込んでいるのです。もし一人が溺れれば、その人と一緒に全員が溺れるのです。

 

なぜこの事を理解することがとても大切なのでしょうか。その理由は、私達が新しい時代のなかで暮らしているからです。信頼と互いへの配慮が、リップサービスではなく、本当に大いに必要とされているのです。今やこれは新しい現実の法則です。それは私達が善くも悪くも相互依存してるという現実における法則です。これから私達は大きな家族として一緒に協力していくしか、他に選択肢はありません。そうすることでようやく私達は地球という船を操縦し、博愛と繁栄という安息の地に向かうことができるようになるのです。

 

もう既に私達は、全世界が1つの集合体および1つの社会として見なすことができる段階に至りました。世界にいる一人一人が自分の必需品と生計の手段を世界の全員から得ているのです。したがって私達の各自も世界全体の安寧のためにケアして奉仕しなくてはならないのです。

(『世界における平和』より、Baal HaSulam、20世紀最大のカバリスト)

 

 

Last Updated (Sunday, 29 November 2009 15:23)